ホモサピエンス型人工生命体の最高技術、N9は、その道では完璧を誇ります。

思考回路・記憶力・運動神経・反射神経・動体視力・その他もろもろがパーフェクト。


この場合の『パーフェクト』とは、一般的なホモサピエンスの水準に届く、という意味です。




つまり、N9系列のサンプルたちは、一般社会で通用するということです。



ただし、作り物であるがゆえの欠点がひとつ。


精神面が、とても陳腐であること。













N9は初期、N9-1、N9-2、N9-3の3体しか完成していなかったのですが、そのうちの1体がこう、いいました。

「僕たちに感情がないというのならば、いっそ実験用に使ってみては如何でしょう」

 

最初の3体にはすでに人権が与えられていたため、新しく4体目(N9‐4)を作り、5体目(N9-5)を作り、その度にプログラムを実験体として都合の良いように書き換え、ついに11体目(N9-11)から、実験体に使われるようになったのです。


僕は、その17体目です。

N9が完成してから相当の年月が経っていますが、初期の3体はこの施設内で、実験する側の職員にまわっているそうです。
職員は全員、髪を覆いマスクにハーフミラーゴーグル、白衣に手袋という重装備ですが、目を見ればおそらくわかります。
N9は、髪の長さを除けば、全員が同じ顔をしています。
もともとは同じプログラムなので、当然と云えば当然でしょう。

N9-11以降は全員がアルビノなので、N9初期の3体は、髪や目に色がついたN9を想像すればいいのです。

N9-11は一番年上なので、一番老けています。
おそらく30代の半ばでしょう。


N9-4からN9−10までの6体がいまどこにいるのか、僕は知りません。
















9日前の朝食後、とても体が重くなって、枕元のボタンを4回連続して押しました。

緊急事態の信号です。



発熱です。
ああ、これまでで熱を出したのなんて、片手で数えられる回数だったのに。
この前の体調異常はたしか2年半ほど前だったかな。






吐気や眩暈ではないのですが、「どんな体調異常でも報告しなさい」と言ったのは実験スタッフの方です。






















































背景提供・・・水没少女 さま
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