メーデー・メーデー。

聞こえますか?
はじめまして。


僕はラット・N9-17−1041です。



ラットといっても、Rattus norvegicus のラット ではありません。

被験体という意味でのラットです。

左手にはラット証を嵌めています。

まぁ、僕の話を聞いてくださいよ。



つい9日前まで、僕は実験を受けていました。





僕に与えられた部屋は、縦、横、奥行きが全て同じ長さの正方形でした。
壁には監視カメラと盗聴器が仕掛けられ、僕の行動を逐一束縛。

壁の一面には、外側からしか鍵をかけることの出来ない電子扉。

その右隣の壁にはユニットバスに通じるドア。
ユニットバスの中では監視はされませんが、時間制限があります。


ふかふかとしたベッドに、百科事典の並んだ本棚。
家具はこれだけです。


衣服は、白い長袖のシャツに白いズボン白い靴下、無色透明のゴーグル、薄手の白い手袋をはめ、ラット証と、腕輪型をした何かの金属(耐水性で、精密機械だと思います)を右手首に付けていました。

僕は生まれつき髪や肌が白いアルビノという体質なので、服を着てしまうと、眼球の赤と腕輪の銀と、ラット証の黒しか、色彩がなくなってしまいます。





僕の一日はとても気ままに始まります。

ベッドの中で目が覚めると、起き上がる前にまず枕元にセットされたボタンを押します。
寝起きは良いほうなので、起き上がるとすぐに軽く体操。
ユニットバスの中で着替え(同じ服を3着ほど持っています)、部屋にもどってすこし読書をします。
百科事典はとても興味深くて飽きません。



ドアの小窓から、一日に三回もらえる食事は、とても毒々しい色彩の飲み物がついてきます。
この色素が体に及ぼす影響、それこそが実験なので、残すことは許されません。

赤が濁ったような、でもどす黒いと表現するのはつまらない色です。

少しだけ見るにはとても綺麗なのでしょうが、グラスになみなみと注がれては、価値が薄れてしまいます。

食事そのものは普通です。 主食、汁物、主菜に副菜。 栄養バランスも良さそうです。



正午から午後5時00分までは部屋のカギを開けてもらえるので、僕は他の被験体のみなさんと共に、施設内のスポーツジムで汗を流したり、ベンチでお喋りを楽しんだり、唯一日の光を浴びることのできるサンルームで昼寝をしたり、気ままに過ごしています。

午後5時00分に響くチャイムで部屋に戻り、読書をしながら夕食を食べ、体を洗い、眠りに就きます。

























僕には自由がありました。


























































背景提供・・・水没少女 さま
inserted by FC2 system